人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「その場所で取れたモンが一番美味いんじゃぁあああ」と思っている、いちおう研究者☆


by charlie-oncoming
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

おにぎり一個でも、スローフード。

 大学院に進学する前、東京都内の日本語学校で日本語教師をしていた。毎日が分刻みのスケジュール。昼食を取れないほど、忙しいことも多々あった。
 しかし、忙しい生活の中にも、いや、忙しかったからこそ、どうしても忘れられないエピソードがある。
 私のクラスに、ミケンさんという中国人就学生(大学、高校等の学校に所属しているのが留学生、大学入学を目的に、日本語学校等で日本語習得のために勉強しに来ているのが就学生である)がいた。授業を最前列で受け、積極的に日本語習得に取り組む、真面目な生徒だった。彼女は、日本語学校と、受験勉強と、そして大学進学のための学費を稼ぐためのバイトで、毎日毎日、忙しい日々を過ごしていた。
 そんなミケンさんがある日、授業が始まる前に、私に大きな炊き込みご飯のおにぎりをくれた。私が「ありがとう。自分で作ったの?」と聞くと、ミケンさんは「はい、早起きして作ってきました。いつも先生にはお世話になっていますから、お礼がしたくて作ってきました。」と答えた。さらに話を聞くと、ミケンさんは私におにぎりを作ってあげたいと思い立ち、バイト先の人におにぎりの作り方や炊き込みご飯の作り方を教えてもらい、いつもよりも早起きして、炊き込みご飯を炊き、四苦八苦しながらおにぎりを作ったのだそうだ。
 私はとても嬉しくなった。おにぎりをそのものというより、ミケンさんが私のために、心を込めておにぎりを作ってくれたことが、とてもとても嬉しかった。
 以前、スローフードの三原則、というものを紹介した。ミケンさんのおにぎりは、この三原則には当てはまらない。しかし、誰かのために、心を込めて、一生懸命作ったものならば、例えおにぎり一個でもスローフードと言っても良いのではないだろうか。
 私はその日の昼、少し仕事をさぼってミケンさんのおにぎりを、ゆっくりと、味わって食べた。少し水っぽくて、少しかっこわるいそのおにぎりの味を、私は一生忘れられない。
by charlie-oncoming | 2004-04-02 15:05 | 美味しく食べよう♪